3月・・・少年の雪
黒いパーカーに黒い前カゴの着いた自転車に乗る少年、その先を顔を赤らめた背の高い少年が走る。
暗くなりかけたマーケット前の人ごみを少年の自転車は、器用にすり抜ける。
先遣隊とでもいった走る少年は、急に踵を返し大きく手を左右に振り上げる。
自転車の少年は、「そうか、そこはだめか」とでもいいたげに顔をしかめる。
がその瞬間、前輪をくるりともと来た方向に回転させ、
「さぁ、次にいくぞ」と気迫の白い息が見る。
横をすり抜けていく黒い前カゴには、白い雪の塊。
少年たちの獲物は、白い雪。
グレーのシャーベット雪では、その価値はない。
白い雪を求めて・・・。
顔を赤らめて・・・。
走る、こぐ・・・。
2人組みの少年。
テストも受験も勉強も、母の小言も、そんなのカンケイない。
少年が少年である遠い原風景。
少年の雪。
明日は、ひな祭り。
春は、もうすぐそこ。
何処の町にも公平に春の暖かさが届きますように。
2012.3.02 Michi‐e Aoyagi